うどん・そば・ラーメン店開業をお考えの方へ

このページでは、これまで節辰商店が数多くのそば店、うどん店、ラーメン店とお取引させて頂いてきた知見から、「開業時におけるだしの設計」と「失敗しないだし業者選び」について考えてみたいと思います。

 

開業時におけるだしの設計

つゆの作り方にはいくつかのパターンがあります。

どの方法が優れているというわけではありません。

すべてはあなたがどのような事業を目指すのかによって決まります。

以下に類型的なパターンについて考察したいと思います。

 

1. 削り節からだしを引き、かえしも内製化するパターン

昔ながらの伝統を持つお店、いわゆる有名店では、

削り節でだしを取り、かえしもお店で配合します。

そういったお店で修行された方が開業を考えた場合、

前のお店のやり方を踏襲するのが定石であると言えます。

削り節であれ、昆布であれ繊細な素材です。

その扱いを十分に心得た方であれば、

本格的な味をどこまでも追及することができるでしょう。

追求と研鑽をお手伝いすることは弊社にとっても大きな使命です。

 

だし業者は前のお店と同じところにすることが多いようです。

しかし、前の店とは違った味をだしたい時、

あるいは目指す事業の方向が前の店と異なる場合は、

だし業者の変更も視野に入れても良いと思います。

ページ後半の「失敗しないだし業者選び」もぜひご参考下さい。

 

一方でこのやり方は急速な店舗展開には不向きとも言えます。

くりかえしになりますが、削り節は繊細な素材です。

味の品質を一定に保つには、常に店主が自らだしを取る、

あるいは常に目を光らせることが必要なこともあるでしょう。

また、後進を育てるには長い時間が必要になります。 

しかし、こだわりの料理を自分が責任を持てる範囲で提供する、

着実に地域に愛されることを志向する、

という考え方は無理な拡大よりも尊いものであるとも言えます。

2. 希釈用のめんつゆを使うパターン

希釈用のめんつゆ・液体だしも登場からずいぶん時間が経ち、

非常によくできたものが出てきました。

一般的な食堂・ドライブイン・居酒屋などであれば、

お客様を満足させられると思います。

 

また、このやり方はオペレーションが用意であるとも言えます。

パートタイマーの方にも仕事を任せられる。

これは大きなメリットで、急速な店舗展開をめざす場合には大きな武器になります。

 

一方で市販のめんつゆを使うと味が似通ってしまうというデメリットもあります。

ある地域であるメーカーの特約店が強いがために、

多くの店舗の味が同じになってしまうというケースもあるようです。

他と差別化された料理の提供を目指すのであれば、商品は吟味すべきです。

(例えば弊社のめんつゆは「だし感」が強いので、

それを好んでくれる方がいらっしゃいます。逆にそれを好まない方もいます。

また流通ルートを限定しているので、「味がかぶる」ということも少ないようです

販路が少ないのは、ある意味メーカーとしては課題でもありますが、、、)。

 

また、液体系は香りが弱いと感じる方もいらっしゃいます。

そういった方に対して、

花かつおを追い鰹的に使用する方法をご提案したこともあります。

「花かつおだしパック」という商品もご用意しています。

 

また、液体のメリットを享受しつつ、味の独自化を図るには、

PB(自社オリジナル)のつゆを作るという選択肢もあります。

この場合は委託先メーカーがどこまで理想とする味を再現してくれるかがポイントです。

(どのメーカーにも得意・不得意があります)。

また、特に開業時には、

小ロットで仕事を受けてくれる業者を探すことも重要になるでしょう。

 

参考事例『沿線ナンバー1を実現したドライブ-インのうどん店』

 

3. だしパックを使うパターン

だしパックは鰹節や煮干、昆布などの粉末をティーパック状の袋に入れた商品です。

味の再現度も高く、香りも強い。

また、汎用品でも他の調味料との合わせ方によって、十分に味の独自性が出せます。

 

また、最近弊社に多くご依頼を頂くのは、オリジナルだしパックの依頼です。

例えばこれまで削り節を使ってきた方が同じ配合でだしパックを作るのです。

また、釜のサイズに合わせたパック(500g入りなど。

弊社ではフィルターパックと呼んでいます)を作ることが可能です。

削り節を使っていた店舗が、多店舗展開をする際に導入することが多いですが、

開業時からオリジナルのだしパックを使う店舗も増えています。

 

また、だしパックと同時にオリジナルのかえしも製作するケースも目立ってきました。

 

参考事例「パートタイマーの負担を軽減。アミューズメント施設併設店舗向け『大容量だしパック』

4. その他

変則的なパターンとして、あるラーメン店の話をします。

その店主は動物系のスープには自信がありましたが、

魚介系には不慣れでした。

開業時の負荷を減らすために、魚介系スープのみを弊社が供給したことがあります。

 

参考事例「新メニューの魚介だし(無化調)で集客に成功。「ラーメン用だしパック」

 

5. 最後に

繰り返しになりますが、以上で示したパターンのどれが良くてどれが悪いというはありません。

自らの店舗を事業としてとらえた時、

あるいは極端に言うと人生において何を目指すかを考えた時、

答えが見えてくる性質のものであるような気がします。

 

参考事例『開業時から多店舗展開を視野に入れただしを開発したうどん店』

失敗しないだし業者選び

弊社のようなだし業者が「失敗しないだし業者選び」を語ることに、矛盾があるかもしれません。弊社ホームページ上の文章である以上、どうしても弊社に有利なようにバイアスがかかってしまう懸念はあります。それでも、開業を志す方のために可能な限り正直に書きたいと思います。

 

また、地方によってだし商品の購入先は変わります。例えば、首都圏だと業務用食材卸に他の調味料と一緒に配達してもらうことが多いと聞きます(逆に名古屋はだし業者による直販が主体であるように感じます)。一方、最近は業務用スーパーの業態が伸びている事もあり、少量の需要に関しては自ら調達に行く場合もあります。また、都市部から離れるとそもそも欲しい商品を配達可能な業者がないため、インターネット等の通信販売でだしを調達するケースも増えています。ですから、以下は「失敗しないだし業者選び」というよりは、「失敗しないだしメーカー選び」とした方が正しいかもしれません。

 

そして、これもだしの設計で話したことと同様、どの業者が優れているというわけではありません。すべてはあなたがどのような事業を目指すのかによって決まります。というわけで、以下にポイントを記します。

 

1. なんだかんだ言っても、やっぱり相性です

いきなり身も蓋もないことを言わせて頂きますが、

お店とだし業者の相性が一番大切だと思います。

私たちの経験でも「何かが違うな」と感じた場合、

取引が長続きしないケースが多いのです。

そして、どちらかというと担当者との相性というよりは、

会社(だし業者)との相性の方がファクターとして大きいように感じます。

明文化はされていないことがほとんどだと思いますが、どんな規模の業者でも、

「ものづくりの思想」や「営業の思想」を持っています。

 

ですから、自らが何を大切にしているか、

当該のだし業者が何を大切にしているか、

はきちんとした話し込みを行うことをおすすめします。

場合によっては、経営層と話す、工場や倉庫をみせてもらう、

ということをしてもいいかもしれません。

 

2.質の高い仕入先を複数持っていること

乾物といえども、元をたどれば生き物です。

つまり個体差があります。

ゆえに、一定の品質の節を安定的に調達しようとすると、

どうしても技術の高い生産者複数から恒常的に仕入を行う必要があります。

だからこそ、多くの業者は産地に足を運び、生産者との信頼関係を築くことを重視します。

だしの味がブレることに悩まされている場合は、この点を深堀してみてください。

 

3. 一定量以上の在庫・一定数以上の販売先を確保していること

上で述べたことと一部重なります。

一定の売り先を持っているから、ある程度の量の節を買うことが可能になります。

新鮮な節を新鮮な状態で加工し、卸すことができるのです。

(「節は寝かした方が良い」という考え方もありますので、

いま述べたことが全て正しいとは言えませんが)。

また、近代の「なるべく在庫は少なく」という経営思想からは外れますが、

一定量の在庫を持っていることのメリットがあります。

くりかえしになりますが、元を正せば生き物なので、

時期によって価格も品質も変動します。

一定量の在庫を持つだし業者はそのリスクをヘッジすることができます。

 

4.目指すべき事業や事業のステージと合っていること

まず、開業時。

あなたが作ろうとするお店に合った理想のだし素材を供給できる業者を見つけなければ、

事業がスタートしません。

 

あるいは、あなたが将来、多店舗展開や低価格の新業態の開発に興味を持っていたとします。

その場合、おそらく希釈のつゆやかえしが必要となるでしょう。

アイテムとして希釈用つゆを持っている業者でも、

生産を外部委託しているケースがあります。

その場合、内製が可能な業者の方が、多くの面で融通が利くと思われます。

 

また、将来、自慢の料理を販売用に商品化したいと考えます。

その際は、部材の供給業者がISOHACCPの認証を持っていないと、

販路が限定されることになるかもしれません。

 

5. 最後に

「だしの設計」で述べたことを繰り返します

どの業者が良くてどの業者が悪いというはありません。

自らの店舗を事業としてとらえた時、

あるいは極端に言うと人生において何を目指すかを考えた時、

答えが見えてくる性質のものであるような気がします。


 

以上、長文にお付き合い頂きありがとうございました。

(文責 節辰商店 営業部 勝田辰雅)

 

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