おいしいダシの取り方を今一度科学的に考えて見ましょう

 

※このページは節辰商店が昭和62年に作成した小冊子「おいしいダシの取り方を今一度科学的に考えてみましょう」から転載しています。

 

目次

全文 | はじめに | だしの種類 | 使用する水の量 | だしの取り方 | 緩衝作用と相乗効果 |だしの使用量 |

蒸発 | 天然調味料と化学調味料の違い附記 きしめん・味噌煮込みの調理法 | 参考文献 |

 

 

だしの種類

アジ(鯵) 

 

イ)   アジ(鯵)
アジ科に属する魚の名称で一般にマアジ(真鯵)が多く、北海道、三陸方面から朝鮮に至る迄広く分布して居りますが、千葉県以南九州にとくに多く56月の産卵前が最も美味ですが、周年殆ど味は変わりません。味にくせが無いので惣菜用、干物、練製品の原料として好評の為、最近は煮干は僅少です。尚ラーメン用のスープとして好まれて居ります。

 

ロ)   ムロアジ(室鯵)
一般にムロアジ(アオ、シロ、クチブト)と、マルアジ(アカゼ、オアカムロ)に区別して居ります。ムロアジは、暖海性で本邦、伊豆、土佐、九州から南洋方面にまで広く分布し、特に棒受網での漁獲が多いですが、伊豆方面ではクサヤの干物並にヒラキとして珍重されて居ります。
旨味に富み味に甘味があり、まろやかであると云われ、ダシ汁が冷めても臭みが出ませんが、長時間煮つめると渋みが出ると云われて居りますが、名古屋地方では、だしとして一番使用されて居ります。


 

ウルメイワシ


イワシ科の魚で主産地は伊豆、紀州、四国、九州、山陰方面です。大体マイワシより暖海性で、丸干としては愛媛、日向が一番美味であります。マイワシと違って血合肉が比較的少なく濃厚な味があります。当地では冬場の使用が多く、関西で特に好まれ消費されて居ります。

 

 

カツオ(鰹)

 

カツオ科の魚。南洋(太平洋)では年間を通じて鮪と同様水揚されるようになりましたが、近年巻網の鰹漁が多くなり出しました。機械で網を入れ、一度に沢山獲る為人件費が少なくすみ原価が安くつく為ですが、一本釣に比較して、味は今一つの様です。

 

日本沿岸では春から秋にかけて、沖縄方面から黒潮に乗って北上した物が漁獲されます。日本海側では稀であります。鮮魚は一般に脂肪の多い物が美味として賞味されて居りますが、鰹節には脂肪の少ない物が良く、枕崎、山川(九州)が昨今では主産地となり、土佐は宗田カツオが主体です。焼津は最大の水揚港ですが、冷凍品はアメリカへ輸出されて缶詰等に消化され、鰹節の生産量は往時と比べ減少しています。

 

 

メジ(鮪)

 

マグロ科の魚。マグロの幼魚の名称です。マグロは九州方面より暖かくなるにつれて北上、四国、紀州から三陸を経て北海道沿岸まで現われ、日本海側でも北上します。

 

マグロは刺身及び、寿司種の王座ですが、メジは高級料理店の吸物等のだしに使用されて居ります。上品なだしが出ます。尚「糸がき」として使用されて居ります。

 

 

ソウダガツオ(宗田鰹)

 

カツオ科の魚。当地から関西方面ではメジカ(目近)といいます。尚、秋の初めに獲れる小形を笹目近と称し、当地では一番好まれます。太平洋岸、日本海いづれにも分布し、沖縄、台湾方面でも多く獲れます。ヒラとマルの2種があり、ヒラの方が大形になりますが、質の良い品は少ない様です。伊豆、紀州、土佐(清水)が節として一番良質で好まれます。鰹節に一番近い味で鰹に比較して味が強いので好まれます。夏期に特に好まれ使用されます。

 

 

サバ(鯖)

 

サバ科の魚。マサバ(ホンサバ)とゴマサバの2種があり、マサバはゴマサバより扁平の体を持っている為ヒラサバともいわれますが、節に良いものはゴマサバです。千葉より九州方面迄太平洋側で獲れます。九州屋久島で獲れる割鯖は屋久鯖として、東京のそば屋さんに好まれます。尚、東京方面はカビ付を好みます。日本海のサバは節に向きません。

 

 

こんぶだし

 

昆布は褐藻類コンブ科に含まれる、海草の総称です。北海道沿岸に多産して居りますが、青森県より岩手県付近まで獲れて居ります。

 

こんぶの旨味成分はグルタミン酸を中心にアラニン、アスパラギン酸などのアミノ酸類とマンニットなどの糖類が中心です。昆布の表面についている白い粉はマンニットやグルタミン酸なので、使用前に乾いた布で表面のほこりを落とす程度にとめます。水洗いをするとおいしい成分が流されてしまいます。昆布にはアルギン酸などヌルヌルした成分と昆布特有のフノリ臭があり、長時間の煮すぎはダシ汁がまずくなり、色も出ます。

 

ダシの取り方は、水が摂氏80度になったところで昆布を入れ、沸騰直前に引き上げるのが一番簡単で良い方法です。水に浸けるのも良い方法ですが、手順が面倒です。

 

 

しいたけだし

 

椎茸には呈味度の高いグアニール酸、果糖類、そのほか数知れぬ天然成分が含まれております。「干椎茸を浸した水は捨てないで料理に使え」といわれます。つけ水そのものをなめてみても一寸カビ臭いだけで、おいしいとはとてもいえません。ところが、これを汁物や煮物に使うと、その料理が驚く程おいしくなります。実はこの汁の中にレオチオニンというカビの臭いに似た香り成分があり、これが1PPm程加わるだけで料理が大変おいしくなる事が解明されています。

 

 

混合だし

 

カツオブシはイノシン酸、昆布にはグルタミン酸、しいたけにはグアニール酸とそれぞれ天然のうま味が含まれており、この三者の味が加わると味の強さが飛躍的に増加します。これを味の相乗作用と申します。従って混合ダシは、鰹節、昆布の単独のときよりも、ダシの量をそれぞれ半分以下に減らしても一段と強い旨味が得られます。