おいしいダシの取り方を今一度科学的に考えて見ましょう

 

※このページは節辰商店が昭和62年に作成した小冊子「おいしいダシの取り方を今一度科学的に考えてみましょう」から転載しています。

 

目次

全文 | はじめに | だしの種類 | 使用する水の量 | だしの取り方 | 緩衝作用と相乗効果 |だしの使用量 |

蒸発 | 天然調味料と化学調味料の違い附記 きしめん・味噌煮込みの調理法 | 参考文献 |

 

 

緩衝作用と相乗効果

緩衝作用とは、溶液に酸、またはアルカリを加えて起こるPHの急激な変動を調節する力のことであります。うどん屋さんで20分以上も煮出すのは結局「濃縮」している訳で、濃いダシには「醤油(たまり)」も沢山交って緩衝作用で独特の美味な濃い汁ができるわけであります。天然醤油(たまり)には乳酸をはじめ微量ですが香りの成分が60種類も含まれており、この香が不快な味や臭いを消します。

 

グルタミン酸系の調味料である醤油と核酸系の旨味成分を持つ「だし」の組み合わせは、異質の旨味を混ぜることで「相乗効果」といって一種類の味だけの場合の数十倍のおいしさになり、味をくどくすることなく旨味の強さを増して味を豊かにしてくれます。また塩を塩辛く感じさせない「塩なれ効果」は醤油も味噌もそのアミノ酸などの働きにより、塩辛さが感じられないように致します。

 

なお、また味噌汁の煮出し汁として一般的(家庭用)に煮干が使用されて居りますが、「煮干の煮出し汁」は、味噌の緩衝能が強く香りも高いので、魚臭の濃厚な煮干を用いても、3%程度の煮出し汁の場合は生臭みを感じさせないばかりでなく味噌汁の味を「こく」あるものにします。味噌には魚臭を除去する(マスキング効果)機能があるからです。味噌汁の煮出し汁にかつお節を用いることが少ないのは、味噌の味と香りが強すぎて、かつお節の上品な風味を活かしてい用いることが出来ないからであります。(新調理科学講座6