開業時から多店舗展開を視野に入れただしを開発したうどん店 

※この事例は顧客情報への配慮から、一部のディテイルを変更して紹介しています。 

イントロダクション

全国にうどん・そば店が約40,000店、ラーメン店が40,000店あると言われています。そして、うどん・そば店・ラーメン店とも約4,000店が新規開業します。この数字だけ見ると非常にビジネスチャンスの多い業界と考えられますが、実は同じ数のうどん・そば店、ラーメン店が閉店しているとも言われています。成功と失敗を分かつものは一体何か?この事例は新規開業時の「だし」のプランニングに関するお話です。

 

お悩み ―起業家と料理人の狭間で

その起業家は、もともと和食の出身でした。だからこそ、「だし」の難しさ・繊細さがよくわかっていました。昆布や煮干の水だしや雑節を煮出す時間が同じでも、素材のコンディションによっては味がブレてしまう。自分が厨房に立ち続けるのであれば、理想のある1点で味をコントロールできる自信がある。しかし、起業家の夢は複数の店舗のオーナーとなることでした。しかし、スタッフに自分と同じ技量を身につけさせるのには、一体どのくらいの時間がかかるのだろう。とはいえ、自分のアイデンティティであるだしにだけはこだわりたい。

 

きっかけ ―「理屈の上ではできるはず」

希釈のめんつゆを使えば、味のブレはカバーできる。ちゃんと銘柄を選べば味もそれなりのものがある。それでも彼は店舗でだしをひくことにこだわりました。理屈の上では、同じ材料を配合しただしパックを使えば、彼が引くだしとほぼ同じ味にはなる。とすれば、多くの鰹節業者と多くの取引を行っているだしメーカーにだしパックの製作を依頼すれば良いのではないか。

 

解決策 ―だしパック、かえしをトータルで開発

彼は節辰商店にだしパックの製作を依頼します。また、その過程で節辰商店はかえしも製作できることを知ります。専用品を作る際のロットの問題も、彼の事業計画上は全く問題になりませんでした。

 

その後 ―1号店の成功に集中できた理由

1号店は繁盛店となりました。だしをしっかり引いているので、正直原価率は高めです。でもこの起業家の考え方は、まずは客数、それも未来永続的にリピートするようなファン、もっといえばその店の信者を作ることこそが強い経営基盤を作ることだと考えています。2号店を出す際に味がブレるという不安はありません。だからこそ、1号店の成功に集中できたのだと言います。